大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ラ)183号 決定

記録によれば、本件は申立債権者日邦商事株式会社こと石田金属工業株式会社(申立債権者は後記の通りその旧商号「日邦商事株式会社」を現商号「石田金属工業株式会社」に変更した。)対本件抗告人間の東京地方裁判所昭和三十三年(ワ)第一〇、一八八号小切手金請求事件の仮執行宣言付判決の執行力ある正本に基く強制執行としてなされた競売手続であることが明らかである。仮執行宣言付判決はそれ自体執行力を有しこの執行力は上訴の提起により当然に失われるものではなく、又右判決に基く執行手続において抗告理由一、二に記載の如き実体上の理由又は同三に記載の如き回復すべからざる損害を被るとの理由によりその執行力を争うことの許されないことはいうまでもない。抗告人の右抗告理由は採用の限りでない。

同四について。

原決定の添附目録によれば本件競落許可の目的たる建物の表示として平家建、建坪十二坪五合、現状二階建、建坪十七坪八合二階三坪一合二勺と記載されていること、及び本件競売申立書添附の固定資産税関係証明書には床面積として十二坪五合と記載されていることは所論の通りであつて、これらの記載によれば本件競売建物の現状は二階建、建坪十七坪八合二階三坪一合二勺であり、右固定資産税関係証明書の床面積の記載は実際の建物のそれと符号しないものであることが認められるけれども同証明書のその他の記載事項就中建物の所在地番及び家屋番号に関する記載は原決定添附目録の記載と全く符号していることが認められるから同証明書は本件競売建物についてその昭和三十四年度の固定資産税額及び都市計画税額等を証明する書面であることは明らかである。抗告人は右の如く本件競売建物の現状と符号しない床面積を記載した前記固定資産税関係証明書は民事訴訟法第六百四十三条第一項第四号の証書としての要件を欠くものであるのみならず競売建物について公簿上における建坪の記載が実際の建坪と符号しないときは公簿の記載を実際と符号するように訂正した上、正しい公課の年額を表示して競売の申立をなすべきであつてかかる措置を採らないでなされた本件競売の申立は不適法であるというけれども、前記法条が同条第一項第四号の証書を競売申立に添附すべき旨を定めているのはひつきようこれにより競売申立当時において当該競売建物に対し現に賦課されている公課の年額を明らかにする趣旨に外ならないからこの趣旨に沿う書面である以上、たといその建坪に関する記載部分が建物の現状と若干異るとしても前記法条第一項第四号の証書であるとするに妨げなく、この場合必ずしも抗告人主張の如き公簿訂正等の措置をとることを要するものではないと解するを相当とする。本件において競売申立書に添附の前記固定資産税関係証明書は前記の如く本件競売建物に対し賦課された昭和三十四年度の固定資産税等の額を証する書面と認められるのであるから前記法条第一項第四号の証書として適式のものというべく、抗告人主張の如き公簿訂正等の措置が採られなかつたとしてもそのために本件競売申立を不適法とすべき理由はない。これに反する抗告人の見解は採用するを得ない。

同五について。

本件競売申立書に添附の執行力ある判決正本によれば、これに附記された執行文には昭和三十四年八月六日附で被告高橋源助(本件抗告人)に対し強制執行のため原告日邦商事株式会社に付与する旨記載されていることが明らかである。又記録中の登記簿抄本(第一五丁)によれば日邦商事株式会社は昭和三十四年六月十九日その商号を石田金属工業株式会社と変更し同月二十日その旨の登記をすませたことも明らかである。そしてこれらの事実関係からすれば本件競売申立人はその旧商号である日邦商事株式会社名義で前記判決の言渡及び執行文の付与を受けたのであつて右執行力ある正本に表示された執行債権者はすなわち本件競売申立人に外ならないことを認めるに十分である。従つて原審が右執行力ある正本に基く本件競売申立に因り競売手続を進行したことは何等違法でなく、この場合本件競売申立人が変更後の現商号を表示して新たに執行文の付与を受けた後でなければ執行手続を開始するを得ないとする抗告人の見解は当裁判所の採用し得ないところである。

(奥田 岸上 下関)

抗告の理由

一、債権者は東京地方裁判所昭和三三年(ワ)第一〇一八八号小切手金請求事件の仮執行の宣言に基き本件強制競売の申立を為したのであるが、右判決に対しては債務者(抗告人)から控訴をなして目下東京高等裁判所昭和三四年(ネ)第一八五九号小切手金事件で第十二民事部で争い中である。

而して右判決において抗告人の主張して居る理由は片田邦二が債権者より買受けた鉄材代金につき同人が抗告人の名義を以て銀行と小切手契約をなした、小切手を振出したもので抗告人は右片田邦二の使用人に過ぎないもので抗告人は債権者に対し何等の債務もなく従つて支払義務もないものである。小切手が抗告人名義であるから小切手債務として支払義務があるように思われるも債権者は右片田邦二との間の取引であることを承知して居り、又小切手取引も実際は片田の銀行との間における銀行取引であることを知り、抗告人は右片田の使用人であることを知つて小切手を受取つたものであるから小切手法第二十二条但し書により悪意の取得者である債権者に対抗し得べきである。故に支払義務はないものである。

二、又右片田邦二から債権者に対し債権者の使用人である宇田川銀蔵に対し金三十五万三千八十八円を支払つてあるから仮りに抗告人において支払義務ありとするも、右金額は差引かるべきものであることを主張して居るのである。

三、前記の次第にて抗告人は第二審においては勝訴の判決を得るものと信じて居り若し第一審の仮執行の宣言に依る判決により本件家屋が相手方の所有となる時は、回復すべからざる損害を被むるものである。故に本件競売は許さないことを求むるものである。

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